きらきらひかる

前のブログにも書いたけど、「普通」の設定で、「よくある」恋愛の作品は経験がないのであまり面白がれない。

どんな作品の根底にもある、恋愛、家族の形が変わっている、江國香織の『きらきらひかる』はまさに自分向けの作品。

 

男の恋人がいる夫・睦月とアルコールに溺れヒステリックな妻・笑子の夫婦の物語。

睦月は、ご多分に漏れず笑子の家族から冷ややかな目で見られるけど、笑子自身は睦月とただ「ずっとこのままでいられること」を願っている。

むしろ、睦月たち(=ゲイ)を群れから外れて暮らす美しい銀のライオンにたとえているし、睦月の恋人・紺とも仲良くしている。

ここまで来ると睦月と笑子(だけ)が結婚していることや睦月と紺が結婚できないこと、もしかしたら笑子と紺が結婚していないことも不思議に思えてきてしまう。

ただ、それを除けば、彼らがとても幸せに暮らしているんだろうなと素直に入ってくる。

 

笑子はアル中になってるけど、多分笑子にとってこの生活は当たり前で、夫がゲイだからとかではなく、この家族が外に受け入れられないから、どうしようもなく酒浸りになっているんだろうな。

自分は酒を飲むと眠たくなるだけだけど、今から自分のするべきこと、しようと思っていることが途方もなく、前例もなく恐ろしいことだという思考にはまり下を向きそうなときでも、風呂に入ってすっきりすれば、現状は変わらずとも全知全能の神になった気分で、へっちゃらな感じがする。

この小説は結局何も解決しないけど、みんなで明るく笑って最後を迎えている。

 

いい意味で現実逃避できる、アルコールのような、風呂のような小説だと思った。

 

実際たくさん酒が出てきて勉強になる。